内視鏡検査
内視鏡検査の長所は5mm以下の小さな早期胃癌でも発見可能など診断精度の高さにありますが、欠点としては以前より嘔吐反射など患者様の苦痛などが大きな問題となっています。対応策として6mm弱の細径内視鏡(経鼻・経口)を用いる方法もありますが、当院では(常備はしているものの)画像の問題(画質の低さ)から通常は用いていません。診断重視の観点から高画素高解像度の内視鏡を通常検査用内視鏡として用いているため、希望者のみならず鎮静剤使用下での検査をお勧めしています。若年者をはじめとして嘔吐反射の強い方は一定の比率で存在するため、ミダゾラムという薬剤を点滴しながら注射します。これにより内視鏡検査への拒否感を回避し、定期的な消化管検査を継続できます。ただしアルコール多飲者や睡眠導入剤常用者などでは効果が低い場合が多いです。
大腸内視鏡検査は前日に検査食を食べ、当日早朝(入院では6時、外来では8時半)から腸管洗浄液2リットルを2時間かけて服用します。排液内に残渣が無くなったら検査開始となります。熟練した医師が施行しますが、検査時間は10~15分程度です。痩せた方や開腹術既往の有る方などでは初めから鎮静剤使用を勧めています。
なお、鎮静剤使用により金額に変動はございません。鎮静剤を使用した場合には、2時間ほどお休みになられてから帰宅して頂くことになります。
がんの内視鏡手術
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という手技で食道や胃の癌を治療しています。対象はリンパ節転移の(殆ど)無い早期癌です。スネア(という電気で切除する金属の輪)を用いない方法であり、粘膜の下の層を直接視ながら切除するため、従来では切除出来なかった3cmを超える病変でも一括で切除出来ます。
食道では3/4周を超えて切除すると狭窄(管腔が狭くなり食べ物が通過せず嘔吐したりする)は必至ですが、切除後から定期的に切除後潰瘍面に特殊な薬剤を注射することで問題なく治癒することが可能となっています。
一方、大腸ではポリペクトミーまたはEMR(粘膜切除術)で治療することが殆どであり、短時間で5個前後のポリープを治療します。ただし3cmを超える病変では一括切除が難しいためESDで対応しています。
ピロリ菌除菌療法
胃・十二指腸潰瘍(瘢痕も含む)以外にも、胃癌や悪性リンパ腫、血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血の患者様の感染診断を積極的に行っています。診断方法は尿素呼気試験(錠剤を内服する前後で呼気を袋に採取するだけで簡便)と血清抗体計測の2つで行っています。ときに便中抗原も検査します。陽性の場合には一次除菌薬を7日間内服します(禁煙必要)。2ヶ月後に主に呼気試験を用いて除菌出来たか否かを判定します。不成功なら二次除菌薬を同様に7日間内服します(禁酒必要)。3次除菌以降は自費診療となり相談のうえ実施します。除菌成功後には発癌のリスクが30%まで低下するとされています。
なお、2013年3月より、慢性胃炎でもピロリ菌の検査並びに陽性の場合の除菌療法が保険適応となりました。ただし、内視鏡検査を受けることが条件です。
胆膵疾患治療
当院では総胆管結石症(腹痛や黄疸、発熱で発症する)や悪性閉塞性黄疸の内視鏡治療が多くを占めます。前者は高齢者に圧倒的に多い病気であり、胆嚢に結石がない場合でも単独で発症することもあります。ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影法)という検査を基本として種々の治療を行っています。十二指腸に開口している胆管の出口(主乳頭)から総胆管に管を挿入し造影にて結石の数、大きさ、位置を確認します。引き続き電気メスを用いて主乳頭を切開し(EST:内視鏡的乳頭切開術)拡げてから、専用のバスケットを用いて結石を把持、胆管外に取り出します。結石の数や大きさにより治療時間は異なりますが、殆どが一時間以内で治療は終了します。後者は癌(膵臓癌、胆管癌、胆嚢癌)により胆管が閉塞してしまい、胆汁が流れずに黄疸を発症します。時に胆管炎を併発し高熱やショック状態となるため、比較的迅速な処置が必要です。EBD(内視鏡的胆道ドレナージ)にて胆管内にステント(やわらかいプラスチックの管)を挿入、留置して減黄を図ります。
肝臓疾患治療
肝炎の治療が殆どであり[1]ウイルス性、[2]自己免疫性、[3]脂肪性肝炎が対象となります。[1]はA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎であり、薬物治療が主体を占めます。とくにC型肝炎ではリバビリン(内服薬)とインターフェロン(週一回の注射)を用いて治療します。現在は治療法が更に進化し、セロタイプⅠ型には「ダクルインザ+アスナプレビル」、セロタイプⅡ型には「ソホスブビル+リバビリン」による内服加療が適応となりました。有効率も80~90%と向上しています。これらの治療には公費による肝炎助成制度や高額医療費助成制度があるため、必要な場合には安心して治療を受けてください。治療前の原因検索や肝臓障害の進行度をみるために超音波誘導下針肝生検(一泊二日)を行う場合もあります。 |